阪急電車

 関西の電車の中で、ひとつ垢抜けて見栄えがするのが阪急電車だと思っています。 電車の内外のデザインもさることながら、駅舎やアナウンス、警報音、制服、駅内広告。皆しっくりきます。そして通っている路線の地域も...

 その阪急電車、私は滅多に乗りません。JRや阪神、地下鉄が選べるなら、多少、駅が遠くてもそちらに足が向いてしまいます。もちろん嫌いだからではありません。阪急電車に乗ると何か切ないのです。

  中学、高校と西宮の上甲東園に所在する学校に通い、自宅は仁川にありました。大阪に行くのには 阪急今津線から神戸線。大学院通学を含めて京都まで行くのは十三、梅田から阪急京都線に乗り換え。ただ、そんな学生時代の淡い記憶よりももっと鮮明なのは一つの恋でした。高校時代には単なる友人だった女友達と大学に通うようになって激しい恋に落ちました。 東京の大学に行っても、何か理由をつけては戻ってきて大阪の大学に通う彼女に会い、最後は阪急電車 に乗って、彼女の家まで送っていくのが日課でした。私の家の仁川と彼女の家とは今津線で幾つかの駅を経て帰らなければなりません。雪の日も、雨の日も、どんなに 遅くなっても、阪急電車で一緒に彼女の最寄り駅まで行き、自宅近くまで送りました。京都から帰るときも、大阪から乗っても、自宅から送るときも。
 

 9年続いた恋は、過熱しすぎて壊れました。一緒に住もうかと購入したマンションは阪神電車の沿線にありました。彼女とは、別れてからあるお店で一度すれ違っただけ。それ以来姿を見たこともありません。実家に行くときしか阪急電車に乗ることもなくなり、その実家もほぼ帰ることなく、ほどなく京都へと引っ越してしまいました。そこにまれに行くとしてもJRを使いました。彼女を失うと同時に阪急電車に乗ることもなくなったのです。

   それから長い年月がたちました。昨秋、たまたま仕事の関係で映画「阪急電車」が話題になり、阪急電鉄の方々と盛り上がりました。私が、この映画を録画しているのだが、泣けそうで怖くて観れないというと、皆さんはそんな映画ではないですよとにこやかな笑顔で観ることをすすめました。仕事で戸田恵梨香さんに会う機会があり、その前に勇気を出して「阪急電車」を観まし た。今津線の路線駅や付近の風景が出てくると、甘酸っぱい気持ちが心に湧き上がってきます。ただ、最後はさわやかな印象で観終わることができました。それだけの時間がたったのだとあらためて知りました。

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コウベライフの雑記帳

以前からある「コウベライフ」 http://ktokuri.exblog.jp/ は街グルメ&街歩きなので、 もっと雑然としたことを書いてみようかと思ってます。