先日、出雲に行きました(7) 旧大社駅

 出雲大社本殿からブラブラ参道を戻っていくと、大鳥居まで門前の商店街が続き、やがて少し鄙びた道に出ます。この道を少し進むと、大社造風の建物と、凜としたスタイルで立つブロンズ像が見えてきます。

 建物は、吉兆館という地域文化展示館で、デザインは大社造をもじった和風神社様式構造。屋根には「吉兆の扇と鉾」がそびえ、大社町のお正月三日に行なわれる伝統行事「吉兆神事」にまつわる展示がおかれているそうです。傍の道の駅と機能的にはセットなのでしょう。

 この特徴的な建物に好奇心をもって眺めると、同じ視野にブロンズ像の姿が目に入ってきます。作家、有吉佐和子の小説『出雲の阿国』でも知られ、歌舞伎の祖とも言われる阿国の像です。この姿、どこかで見たことがあるな....と思って、このときは謎が解けませんでしたが、半月後、京都の四条大橋のたもと、歌舞伎の南座のすぐ近くに同じ姿の像がありました。調べてみると出雲空港にも同じ姿の像が置かれているとか。颯爽とした姿が、歴史話で紹介されている阿国の生き様によく似合っていると感心しました。

ここから、さらに南に歩を進めると、大きな木造の建物が目に入ってきます。



 和風駅舎の最高傑作と言われる旧大社駅駅舎です。この駅は明治45年に国鉄大社駅の開通により開業され、大正13年2月に新たに改築、出雲大社の門前町にふさわしい純日本風の木造平屋建てで、誠に優雅な雰囲気があります。JR大社線は、平成2年3月31日に廃止され、その後旧大社駅舎は平成16年に国の重要文化財に指定されたそうです。おそらく、出雲大社の傍らという場所柄、この駅を皇室のメンバーが訪れることも多かったでしょう。この駅舎待合が地域の正装した名士達で混雑する様子を勝手に想像して、全く知らない大正という時代、いかにも浪漫の香りがする時代に想いを馳せることができました。

 細部まで美しくデザインされた出札室、高く壮大で美しく天井からは灯篭型の和風シャンデリアが下げられており、玄関を含めて30個あるそうです。駅舎屋根の中央には千鳥破風が取り付けられ威風を放っとともに、棟には鴟尾が乗り、それぞれの破風には懸魚までついています。

 また、亙は普通のサイズより大きく、玄関中央の懸魚の上野瓦は国鉄マークである動輪の特製のデザインが入り、瓦の上には亀の彫物が6個載っている等、細かいところまでデザインが磨き抜かれ、壮麗な寺院建築のようです。


 木製の改札口を通り、風情のある信号機を見ながら駅のホームを進むと、そこには「デゴイチ」D51774号機が置かれていました。随分古くなってはいてますが、この駅の空気の中に居心地良さそうに溶け込んでいました。廃線となるときには、デゴイチがさよなら列車としてデモストレーションで走ったようです。
 そんなことをスマホからのネット情報で眺めながらこの駅をぶらついていると、この駅の前を三十数年前も通った記憶が蘇ってきました。そのときにはまだ現役の駅だったはずです。駅の時間がゆっくり経過するのに、自分の時間はなぜこうも速く過ぎ去っていくのでしょうか。

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コウベライフの雑記帳

以前からある「コウベライフ」 http://ktokuri.exblog.jp/ は街グルメ&街歩きなので、 もっと雑然としたことを書いてみようかと思ってます。